この眺めも、あと1カ月半

函館駅を正面から俯瞰で狙うのは、いとも容易いことだった。

函館駅前ビル(旧棒二森屋アネックス)の上階に行くだけで、

ベストアングルが得られるのだから。


ただ、快心の1枚をものにするには、

光線に恵まれなくてはならないし、

眼下を過ぎる人、モノ、車や市電など、

突然現れる被写体を画面のどの位置に収めるか、

あるいは面白い被写体が出現するのを

どれだけ粘り強く待ち続けられるか、

などなど、複雑な要素が絡まってくる。

星野勲さんの写真集『あのころの函館を旅する』でも

この場所から撮られた1枚を見開きで収録したが、

影がほとんど写っていないという、実に良好な光線のもと

画面右中央には、当時現役だった観光馬車が

市内へ向け走り出す姿が、絶妙な位置で捉えられている。


今や観光馬車を撮るなど、ないものねだりもいいとことだが、

もうあと1カ月半余りで、この恵まれた撮影場所自体がなくなってしまう。

棒二森屋閉店後も、3年の期限付きで商業ビルとして生き長らえてきた

この函館駅前ビルに、来年1月末、その期限がやってくるのだ。


冒頭の1枚と下の写真は、一昨日(2021年12月9日)の午後5時前後に撮影した。

まさに函館駅前の日暮れ時。

星野さんも、函館駅前ビルの終了は、実に悲しいことだとおっしゃっていた。

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