ラーメンブームが続いているのになぜ

今から十数年前、京都から函館通いを始めたころ、

大手町でふと見かけて、その年月を経た風情に惚れ惚れした丸豆岡田製麺。

主な事業所はすでにここから移っていることは知っていたが、

このような建物が健在であることが何とも嬉しかった。


自分にとっての函館の魅力の1つは、正直に歳月を重ねた建物、

つまり妙に化粧直しされず、その年輪のようなものを漂わせているような建物が

多く残っていることだった。

幼いころの背比べの柱の傷が、

大きくなってもそのまま大事に残されている

といった感じだろうか。


しかし、先日の地元紙によると、丸豆岡田製麺が事実上の事業停止状態になったという。

平たく言えば倒産ということだろう。

40年ほど前の最盛期に30社以上あった函館製麺組合加盟社は、

岡田製麺を含め3社になっていて、

業界は後継者不足や原材料費の価格高騰で厳しい状況にあるということだ。


コロナ禍があり、ウクライナ侵攻があり、

どの業界も経営環境が厳しくなっているのは察しがつく。

しかし自分のような素人は、

ここ長らく、空前ともいうべきラーメンブームが続いているから

製麺業界はそれなりにやって行けているのだろう、くらいに考えていた。

あにはからんや、函館の製麺組合加盟社がこれほど激減しているとは。


運送業界にしても、これほどネット通販が普及して、さぞかし需要があるはずだが、

「2024年問題」という深刻な問題に直面しているという。

こちらは、倒産というより、人手不足や高齢化などの問題が大きいようだが

需要があるにも関わらず、発注者に対して強気になることができないという

何らかの理由があるのだろうか。


ラーメンブームで、誰が笑ってきたのだろう。

ラーメン店にしても、ブームであるがゆえの競争激化という部分もある。

デフレの日本、安価で美味しいラーメンを食べ比べられる一般市民が

恩恵を受けているのだろうか。

いや、さまざまなラーメン店を面白おかしく取り上げて

視聴率やアクセスを稼いでいるメディアがいちばんの勝者なのだろうか。


いやどの世界も競争激化。

今の日本は、いくら人気が出ても、売上が増えても、誰も笑えないという

悲しい国になってしまったのだろうか。